プロクソンの「丸のこ」を作ろう

最近、プリント基板をオーダーして作る機会が増えました。

今までだと、生基盤を用意してパターンを転写、エッチングして、ドリルで穴あけという手順が必要だったので、それほどの回数で基板を作ることがありませんでした。

基板を作る回数が少ないので、ノコギリで少しの範囲を切れば終わりでした。
良く使うユニバーサル基板なら、工作用のニッパで簡単に切断できますね。
ところが、最近になって、簡単・安価に基板をオーダーするのことが出来るようになりました。

さらに、作った基板に SMD(表面実装部品)を乗せて自宅リフローする手順も完成しつつあるので、今後は基板をオーダーする機会が増えそうです。
そうなると、基板を切断する機会が増えそうです。

しかし、一軒家でガレージでもあれば、大きなノコギリや電動工具を置く場所も出来るし、音をたてて作業しても大丈夫ですが、集合住宅では作業の方法も限られます。
さらに、我が家には「世界一ビビりな猫」のくうちゃんがいるので、可能な限り静かな加工方法が必要です。
(何かあると、すぐに血尿が出ます。)

簡単で、静穏で、コンパクトに、プリント基板を切断する方法を考えなければなりません。
そこで、都合よく入手した「ジャンク部品」で丸のこを作ります。

ハードオフで「良い物」(ジャンク)を発見!

プリント基板の切断方法を色々と考えていたある日、ふと寄ったハードオフのジャンクコーナーで出会いがありました。
プロクソン社の糸鋸 27088 の OEM(だと思われる)リョービの TF-30 卓上糸ノコ盤のジャンクです。
(写真はプロクソン社のHPより引用)

写真は形状が違いますが、この糸鋸の旧型で黄色いアーム部分がない、本体のテーブル部分だけがジャンクとして売っていました。確か数百円でした。
(リョービの糸鋸のアームは、濃いオレンジ色ですが。)

「どこかで見た形だよなぁ?」
ジャンク品を手に取って、しばらく考えました。
「あ、丸のこだ。」

その時は、プロクソンから卓上式の「丸のこ」が販売されているとは知りませんでしたが、ホーザン社でプリント基板などを切断するために、卓上丸のこが販売されていることは知っていました。
PCBカッター K-111 です。
(写真はホーザン社の HP より引用)

これだけ形が似ていれば、中身は同じであろう(プロクソンの OEM ?)と想像できます。
(もしかしたら糸鋸のテーブル部分に、丸のこ用の刃を買ってきて取り付けたら、丸のこになるのでは?)

分解する前で、取扱説明書も見ていないのに、勝手に想像してしまいます。
気づいたら、レジで支払いを済ませていました。
(サイズも 25 cm × 19 cm と小型ですから。)

プロクソンの糸鋸と「丸のこ」の違い

改造するためには資料が必要なので、プロクソン社の「各種ダウンロード」ページに行って取扱説明書をダウンロードします。
「No.27006 ミニサーキュラソウテーブルEX」(丸のこ)と「No.27088 コッピングソウテーブルEX」(糸鋸)です。
それぞれの「展開図」のページを見ます。

糸鋸のテーブル

アルミ製のテーブル部分です。
糸鋸用のテーブルは、中央に糸鋸の刃が通る丸い穴だけが開いています。

丸のこのテーブル

丸のこのテーブルには、丸のこの刃が出る長穴と、保護用具を取り付ける短い長穴の2つの穴が開いています。
糸鋸を改造するならば、長穴を2つ開ける必要があります。

糸鋸の駆動部分

糸鋸のモータと駆動部分です。
この図では分かりづらいですが、「58」はゴムベルトで「37」のギアとモータを中央のボックス内で駆動します。
「34」「80」「32」「89」が糸鋸刃をカム部品で上下します。この部分は丸のこには必要ありません。

丸のこの駆動部分

丸のこのモータ部分です。
糸鋸に比べると、カム部分がない分だけシンプルです。

「57」のゴムベルトは、糸鋸より短かく見えます。

「25」のギヤも糸鋸のギヤより小さそうです。

「26」の軸は、糸鋸にはないので、どこかから入手する必要があります。
当然、丸のこ用の刃(27)も必要です。

必要な部品の確認

ネットで色々調べると、デンマークの工具販売店がプロクソン社の修理用部品を広範囲に扱っていることが分かりました。
Fluid」社です。
ここで、プロクソン社の丸のこ用の部品を見てみます。
(この後の写真は、「Fluid」社の HP から引用しました。)

軸 (PROXXON 27006-26)

上の図の「26」の軸です。部品番号は「27006-26」です。
このような形状の部品ですが、軸の直径などは分かりませんでした。

AliExpress で似たような部品を探すと、「ロータリーツール用ロッド」が見つかりました。
直径は 6 mm なので、部品箱のベアリングが使えます。

ギヤ (PROXXON 27006-25)

上の図の「25」のギヤです。部品番号は「27006-25」です。
このような形状の部品ですが、ギヤの端数、直径などは分かりませんでした。

仕方がないので、3Dプリンタで似たようなサイズで、いくつかのギヤを作りました。
ギヤの各種 3D データは、いつもの Thingiverse からダウンロードしました。

ゴムベルト (PROXXON 27006-57)

上の図の「57」のゴムベルトです。部品番号は「27006-57」です。
このような形状の部品ですが、ギヤの歯数、直径などは分かりませんでした。

そこで、写真から歯数を調べて糸鋸のゴムベルトの幅から、
・36MXL シリーズ
・歯幅:10mm
:歯数45T
・ピッチ:91.44
であると推測しました。
この規格のゴムベルトが AliExpress で購入できました。

ケース (PROXXON 27006-04)

ちなみに、中央のギヤとモータが入るケースは、このような形状ですが、糸鋸と丸のこで共通の部品を使っています。

ここまで見てきて分かりましたが、取扱説明書の「展開図」に書いてある番号は、そのまま品番と対応しているようです。

ついでに、AliExpress で「アングル定規」と「チタンコーティング丸のこ歯」も注文しました。合わせても千円以下です。

全てを合わせても、2千円以下で必要な部品を調達できました。

アルミ天板の加工

写真がありませんが、アルミ天板を加工しました。
ドリルで数個の穴をあけて、その穴を糸鋸でつなぎ、ヤスリで削って長穴2つを仕上げました。

「丸のこ」の歯が出る部分の穴の位置は、糸鋸用の天板にも裏側に長穴の形状が加工してあり、材質もアルミで柔らかいので簡単に改造が出来ました。
(写真は丸のこ用の天板の裏側ですが、長穴の形状などはふさがっていますが、同じ形状で刻印がありました。)

不足部品の製作

足りない部品を 3D プリンタで製作します。
データは、Thingiverse から入手しました。

カット用のガイド「PROXXON KS220 / KS230 Remplacement Guide」(VFrangi さん)

カット用の保護部品「Proxxon KS 230 – replacement for lost or damaged cut protection」(Copyright さん)

「丸のこ」を組み立てる

加工、製作した部品を組み合わせます。
総額2千円程度で、自作の「プロクソン丸のこ」が出来ました。

今回入手したリョービの糸鋸には、切断作業中にスイッチを入り切りする方法がないので、フット・スイッチを作りました。
時間が出来たら、このフットスイッチも記事にします。

「丸のこ」の評価

実際に、オーダーしたプリント基板をカットしてみます。
手動で、のこぎりで切っていた時とは雲泥の差です。まっすぐ「キーン」と切れます。
(写真は、丸のこで切っただけのヤスリ掛け前ですが、きれいな断面です。)

心配した歯のブレも思ったほど酷くなくて、まっすぐにカット出来ました。
ただし、それほどトルクは強くないので、切っている途中で止まろこともありました。
これ以上固い材質や、厚い物の切断は難しいでしょう。

切断後には、思ったほど多くはないですが、黄色く細かい粉が出ます。
室内で作業をする場合には、粉塵対策と掃除が必要になります。

これで、自作基板をオーダーしても楽にカットが出来ます。
出来上がってみると、本家プロクソンの濃緑色やホーザンの明るい青色と比べてみても、リョービのテーブル部の灰色系の色は電動工具として気に入りました。
満足度は、95点です。

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